顧客識別に向けた顧客・購買DB分析
CRMを実践するには、購買データや顧客データ、行動データといった様々なデータを顧客単位に紐付ける作業「1顧客1ID化」による統合データベースの構築が必要です。統合データベースを構築したうえで、RFM※1等の要素に応じて優良顧客の明確化を図り、各種施策を展開することが可能となります。
購買データ(会員購買履歴)や顧客データ(会員情報)だけではなく、行動データ(キャンペーン応募・ログイン履歴・SNS参加)やVOCデータ(アンケート・コールセンター)等、顧客に関する様々なデータを横串にさして統合データベースを構築することが、実践CRMの第一歩です。
1顧客1ID化された統合データベースをRFM※1等の要素により分析することで、それぞれの顧客のランクを的確に判定し、既存顧客の離反の防止や、購買単価・来店回数を増加させてロイヤルティを高めることで、VIP顧客へと育成することができます。また、見込の高い潜在顧客へアプローチし、初回顧客、リピート顧客と段階的に育成することが可能です。
顧客データの収集・管理・分析・活用から優良顧客の明確化など、全体の流れは以下のとおりです。
顧客の識別
収集スキームの構築
- DB構築
- 会員Webサイト構築
- 顧客アンケート実施
- 顧客情報収集スキーム設計…
DB統合
{1顧客 1ID化}
商品マスタ・顧客マスタ・
VOCデータ・購入データの紐づけ…
総合型データベースと分析結果の結合
- デシル分析 ※2
- デシル移動分析 ※3
- 顧客離反率分析 ※4
- RFM分析 ※1 …
CRMを進めるには、顧客の属性情報(氏名、住所、年齢、家族構成等)や購買履歴(いつ、どこで、誰が、何を、いくらで等)を収集する必要があります。顧客情報収集の仕組みづくりとしては、データベースや会員Webサイトの構築等を行います。
収集した情報を顧客単位の購買行動として分析するため、購買データや商品マスタといった各種データと顧客データを紐づけ、1顧客1ID化することが重要となります。このように生成した統合型データベースを、デシル分析やRFM分析等の手法により解析し、顧客構造を把握します。
自社の特性を踏まえた“真の優良顧客”の定義づけ
- RFM軸評価
- 購入商品カテゴリ
- 戦略商品購入
- エンゲージメント
優良顧客の分析
- 顧客セグメント分析 ※5
- クラスター分析 ※6
- ディシジョンツリー分析 ※7 …
統合型データベースの分析と並行し、企業にとっての優良顧客を定義することが必要です。優良顧客を的確に見極めるためには、デシルやRFM軸といった評価だけでは不十分な場合もあります。購入する商品カテゴリの数や、戦略的な商品の購入度合など、自社の特性を踏まえた“真の優良顧客”の定義づけを行います。
優良顧客を明確化したうえで、優良顧客とそうではない顧客の属性や購買行動の違いを、顧客セグメント分析やクラスター分析、ディシジョンツリー分析等の各種統計手法を駆使して明らかにします。これらの差異に基づき、DMの効果向上や離反防止策の立案等のプロモーション戦略に反映します。
顧客リレーションの構築
顧客情報を一元管理し、優良顧客への対応を差別化
- 営業担当
- RF店舗(スタッフ)
- コールセンター
- 営業担当
- ソーシャルメディア
顧客満足を高めるためには、上記の各チャネルにおいて発生する情報をデータベースとして一元化し、シームレスな顧客対応を実現することが重要です。また、顧客対応はすべての顧客に対して一様なのではなく、特に優良顧客に対しては差別化されたサービス提供が求められることが一般的です。
したがって、営業担当、店舗(スタッフ)、コールセンター、Webサイト、ソーシャルメディア等、お客様とのあらゆる接点において顧客情報を一元管理し、優良顧客や一般顧客それぞれに対する最適なリレーションを構築することが、顧客満足の向上に繋がります。
最適なリソースアロケーションによる顧客獲得・維持・育成
- 優良顧客分析による新規見込顧客への効率的
アプローチ - 既存顧客維持:離脱顧客への効率的アプローチ
顧客データを統計手法を用いて分析することで、DM反応度や解約予兆傾向といったライフサイクルモデルを構築します。ロジスティック回帰分析※8を用いてDMの反応予測モデルを作成することで、個人毎の予測反応率を算出し、DM運用の効率性を飛躍的に高めるといった取り組みができるようになります。また、解約予兆を事前に察知して、顧客アプローチに反映することが可能になります。いずれもリソース配分の効率化により既存顧客の離反を防止し、顧客の育成を図ることが狙いです。
また、既存顧客の維持・拡大にとどまらず、優良顧客の特徴を捉えて新規顧客獲得施策に反映することで、後の優良顧客になる見込みの高い消費者に対して効率的にアプローチすることが可能になります(次世代のCRM参照)。
※1 RFM分析
「いつ買ったか、最近購入しているか?」を示すR(Recency:最新購入日)、「どのくらいの頻度で購入しているか?」を示すF(Frequency:累計購入回数)、「いくら支払っているか?」を示すM(Monetary:累計購入金額)の3点から顧客をセグメントする分析手法です。各指標にランク(R1~R5等)をつけ、R・F・Mのうち業種業態に合った最適な軸をとり、顧客を細分化します。
※2 デシル分析
全顧客を購入金額の高い順に10等分し、その売り上げ構成を分析する手法です。「上位20%の顧客で全売上の80%を占める」といったパレートの法則が成立しているかをチェックする際などに利用します。
※3 デシル移動分析
デシル分析の結果を応用し、複数期間 でランクの推移を比較する手法です。対象期間と比べて過去はどうなっていたか、上位顧客から下位顧客への移動の実態・傾向を把握することができます。
※4 顧客離反率分析
離反した顧客数を一定期間ごとに算出し、顧客離反率や離反売上高、顧客寿命を把握する手法です。
※5 顧客セグメント分析
RFM等により特定されたセグメント(呼び方は様々ですが、「最優良顧客」、「優良顧客」、「一般顧客」、「離反傾向顧客」、「新規顧客」のように識別されます)について、セグメントごとに購買金額や頻度、商品カテゴリ等の情報を比較分析します。
※6 クラスター分析
異なる性質のものが混在している集団の中から、お互いに似ているものを集めて集団(クラスター)をつくり、集団を分類する方法の総称です。購買アイテム等が似ている傾向のグループごとに購買日間隔やプロモーションに対する反応を見ることで、より効果的な施策展開が可能です。
※7 ディシジョンツリー分析
目的(継続/離反・満足/不満足等)と複数の要因(性別や居住地、年代、購買商品カテゴリ等)の関係性を分析する手法であり、顧客満足度や購買有無といった目的に対して、統計的に優位な影響を与えている要因を抽出することが可能です。
継続顧客と離反顧客ではどのような差異があるか等を分析する際に利用します。
※8 ロジスティック回帰分析
ある事象の発生する確率を予測する分析手法であり、事象発生に影響のある要因を検証します。過去の購買状況等から顧客毎の離反予測確率やDMの反応予測率を算出する際などに利用することができます。