CRMコンサルティングとシステム提供を通じた顧客戦略支援で、事業の成長を設計するスマートウィル

CRMコンサルティングとシステム提供を通じた顧客戦略支援で、事業の成長を設計するスマートウィル

Column
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なぜCRMはうまくいかないのか?

スマートウィルコンサルティメンバーによるコラムシリーズ第2回をお届けします。


はじめに|BtoC企業のCRMは「分かっているのに、なぜか成果が出ない」

前回の記事では、
「CRMを実践するとは、システムを入れることではない」
という基本的な考え方を整理しました。

BtoC企業の方とお話ししていると、こんな声をよく耳にします。

  • CRMの考え方は理解している
  • データもそれなりに揃っている
  • それでも、売上や利益につながっている実感がない

実はこれ、珍しい話ではありません。

スマートウィルが支援しているBtoC企業でも、CRMがうまくいっていないケースの多くは、
「理解不足」ではなく「つまずきやすい落とし穴」にハマっているだけ、ということがほとんどです。

今回は、 BtoC企業のCRMが成果につながらないときに、特に起こりやすい3つの落とし穴を整理します。


落とし穴①:顧客を「区別(差別)してはいけない」と思っている

最も多いのが、この落とし穴です。

BtoC企業では、

  • 会員は平等に扱うべき
  • 特定の顧客だけを優遇すると不満が出る
  • ブランドとして公平性が大事

といった考え方が根強くあります。

考え方自体は間違っていません。ただし、CRMの文脈では注意が必要です。

実際のBtoCビジネスでは、

  • 売上の大半を一部の顧客が支えている
  • 来店頻度や購買頻度に大きな差がある
  • 利益を生んでいる顧客はさらに限られている

という構造になっているケースがほとんどです。

それにもかかわらず、
すべての顧客に同じ施策・同じ対応をしてしまうと、
結果として
「誰にも強く刺さらないCRM」 になってしまいます。

CRMは、 顧客を差別するための仕組みではなく、
限られた経営資源をどこに使うかを決める仕組みです。

この視点を避けて通ると、BtoC企業のCRMはほぼ確実に形骸化します。


落とし穴②:LTVだけを追い、顧客収益性を見ていない

次に多いのが、 LTV(顧客生涯価値)を追いすぎてしまうケースです。

BtoC企業では、

  • リピート率
  • 購買頻度
  • 平均購入単価
  • LTV

といった指標が重視されがちです。

もちろん、これらは重要です。
ただし、LTVが高い=健全な顧客とは限りません。

例えば、

  • 割引やポイントで無理に来店させている
  • 対応コストや現場負荷が高い
  • クレーム対応が常態化している

こうした顧客でも、 数字上のLTVは高く見えることがあります。

スマートウィルが行っているCRMコンサルティングの現場でも、
「数字は伸びているのに、現場が疲弊している」 という
BtoC企業の相談は非常に多くあります。

CRMで本当に見るべきなのは、
売上の大きさだけでなく、 その顧客がどれだけ健全に利益を生んでいるかです。

LTVと顧客収益性を切り分けて考えられないと、CRMはかえって経営を歪めてしまいます。


落とし穴③:施策から考えてしまう

最後は、進め方の問題です。

BtoC企業では、

  • メルマガを強化しよう
  • LINE配信を増やそう
  • 会員ランクを作ろう

といった施策からCRMを始めるケースが非常に多く見られます。

これは決して不自然なことではありません。

実際、多くの企業では、

  • 既存ツールの活用を求められる
  • 現場から「何か施策を打ちたい」と声が上がる
  • 経営から短期成果を求められる

といった背景があり、
施策から始めざるを得ない状況も少なくありません。

ただし、ここで注意が必要です。

施策だけが先行すると、施策が増えるほど

  • 現場が複雑になる
  • 店舗やCSの負荷が高まる
  • 何のためにやっているのか分からなくなる

という状態に陥りやすくなります。

問題は「施策から始めたこと」そのものではなく、その後に判断の整理が行われないことです。本来の順番は、施策の前にあります。

  • どの顧客に注力するのか
  • その顧客に、どんな行動を促したいのか
  • その結果、どんな関係を築きたいのか

この整理がなければ、施策は積み上がっても、CRMとしての一貫性は生まれません。

一方で、施策から始まったとしても、途中でこの判断に立ち戻ることができれば、
CRMは十分に立て直すことが可能です。

重要なのは、施策の有無ではなく、施策を支える判断軸があるかどうかなのです。


正しい順番とは何か

ここまで見てきた3つの落とし穴は、 すべて「考え方」と「順番」の問題です。

  • 顧客を識別する
  • 注力すべき顧客を決める
  • その顧客との関係性を設計する

この順番を押さえて初めて、 施策やツールが意味を持ちます。

この考え方の全体像については、 第1回の記事で詳しく整理しています。

CRMを実践するとは、システムを入れることだと思っていませんか?


おわりに|失敗しているのではなく、つまずいているだけ

BtoC企業のCRMがうまくいかないとき、それは努力や意識が足りないからではありません。

  • 公平性を重視する文化
  • 現場負荷の高いオペレーション
  • 多様な顧客接点

こうしたBtoC特有の事情がある以上、つまずきやすいポイントが存在するのは自然なことです。

もし、 「これ、うちのことかもしれない」 と感じる点があれば、それはCRMを見直す十分なサインです。

    • 著者
    • 株式会社スマートウィル
      コンサルティング事業部門
      神野 亜実
  • 早稲田大学卒業。
    法人営業を経て、職業・社会体験施設「キッザニア東京/甲子園」にてスポンサー企業の開拓および施設開発プロジェクトのマネジメントを担当。
    その後、HRテックベンチャー企業に参画し、営業企画、カスタマーサクセス部門、コミュニティマネジメント部門の立ち上げを経験。事業成長フェーズにおける組織設計と顧客接点の構築を牽引。
    スマートウィルでは、社長室長として全社横断の業務改善・DX推進を主導。現在はコンサルティング事業部門の部門責任者として、自社プロダクトの改善やCRMを起点とした経営・事業変革支援を担う。
    • 株式会社スマートウィル代表取締役、青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科講師 坂本 雅志
    • 監修株式会社スマートウィル代表取締役
      青山学院大学大学院
      国際マネジメント研究科講師
      坂本 雅志
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      note
  • 日本生命保険相互会社にてリテールマーケティング戦略の構築に携わった後、日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社(現 シティグループ・キャピタルパートナーズ合同会社)に参画。企業買収(PE投資)ビジネスにおいて、マーケティング戦略担当として主にリテールビジネス領域の投資先企業の経営支援を行う。その後、テレマーケティング事業のリーディングカンパニーである株式会社ベルシステム24にて、社長室長、執行役員営業企画室長、専務執行役・COO(最高執行責任者)などを歴任し、事業運営および成長戦略を牽引。あわせて日本テレマーケティング協会常任理事も務めた。
    2010年に合同会社スマートウィル(現 株式会社スマートウィル)を設立。CRM(顧客関係管理)を軸としたマーケティング戦略・組織変革支援を行う。
    2012年より青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科(MBA)にて講師を兼任し、「CRM戦略」を担当。
    2014年には『この1冊ですべてわかる「CRMの基本」』(日本実業出版社)を刊行し、累計発行部数19,200部(第9刷)を超える。
    2025年、東京都議会議員に初当選(世田谷区選出)。現在は、民間企業で培ったマーケティングおよび経営の知見を生かし、都政にも取り組んでいる。