スマートウィル代表坂本によるコラムシリーズ第二弾の第7回をお届けします。
売り場にポスターを掲出する。
メルマガを送る。
SNSを更新する。
これらはすべて「顧客接点」の一例ですが、その効果が感じられないとすれば、原因の一つは“配置”に終始していることにあるかもしれません。
いま求められているのは、接点を“ただ設置する”のではなく、「どの顧客に」「どのタイミングで」「どんな手段で」届けるかを、戦略的に設計することです。
それは、一方的な「接触」から、文脈に沿った「関係性の投げかけ」へと進化させる取り組みでもあります。
“置いてある”だけでは、動かない
「せっかくLINE公式アカウントを始めたのに、登録者が伸びない」
「アプリを開いてもらえない」
「メルマガは配信しても反応が薄い」
こうした悩みは、珍しくありません。多くの場合、原因は“出し方”にあります。
せっかくの接点も、顧客にとって「今じゃない」「関係ない」と思われれば、スルーされて終わります。
接点の設置はスタートでしかなく、接点を「動かす」設計がなければ、効果は期待できません。
顧客行動を読み取って次の一手を設計する
顧客の行動は常にサインを発しています。
たとえば:
- 定期的に予約していた顧客が、ぱったり来なくなった
- 店舗には来ていないが、Webマイページの閲覧頻度が上がっている
- 過去に対応したスタッフとの履歴が長い顧客が、久しぶりに来店した
こうした行動の変化を捉えることができれば、そこに「次の一手」を設計できます。
スマートウィルでは、顧客の行動ログをもとに、「接点の最適な出し方」をデザインする支援を行っています。
たとえば:
- 過去の閲覧傾向や来店・予約履歴をもとに、商品やサービスへの関心が高まっている顧客には、関連情報やキャンペーン案内をLINEやメールでタイミングよく発信
- 久しぶりに予約した顧客には、過去の接客履歴に基づいたスタッフ名義のおかえりなさいメッセージを、SMS・LINE・メールなど顧客に合わせた手段で届ける
- 来店後に一定期間が経過した顧客には、「その後いかがでしたか?」といった関係性を深めるフォローコミュニケーションを実施し、再訪や紹介につなげていく
これらはすべて、「顧客の文脈に寄り添う」接点設計です。
顧客が「今、どのような関係ステージにいるのか」を捉え、次の接点が違和感なく届くようにする。
それが、接点をデザインするということです。
OMOという発想:顧客行動を起点に世界をつなぐ
このような設計は、「OMO(Online Merges with Offline)」という考え方にも通じます。
つまり、「リアルとデジタルを別ものとして分けるのではなく、顧客行動を軸に一体でとらえる」という視点です。
たとえば、店舗での接客体験の続きを、デジタルでフォローする。
Webでの行動を見て、リアルな関係性づくりにつなげる。
こうした連携が、顧客にとっては「ひとつながりの体験」として受け止められ、エンゲージメントを高めます。
接点は、ただ配置するものではなく、設計するもの。
そしてその設計の出発点は、顧客の行動を読み解く力にあります。
私たちは、この接点の再設計こそが、CRM戦略の分水嶺になると考えています。
次回予告
顧客を“識別”するという発想
― ID統合、CDP構築、CRMデータ基盤論 ―
「誰に、何を、どう届けるか」の“誰に”を明らかにするためには、まず「識別」の仕組みが欠かせません。
CRMにおける“ID”の意味、そしてデータ基盤づくりの要点とは――。
【Smartwill's 視点】
CRMの本質は、「伝える」よりも「届く」ことにあります。スマートウィルでは、顧客の関心・関係性・タイミングを読み解きながら、接点の設計支援を行っています。
単にツールを並べるのではなく、“誰に何をどう届けるか”の設計こそが、CRM成果の分かれ道になる――その思想が、私たちの実務の中に息づいています。
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日本生命保険相互会社にてリテールマーケティング戦略の構築に携わった後、日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社(現 シティグループ・キャピタルパートナーズ合同会社)に参画。企業買収(PE投資)ビジネスにおいて、マーケティング戦略担当として主にリテールビジネス領域の投資先企業の経営支援を行う。その後、テレマーケティング事業のリーディングカンパニーである株式会社ベルシステム24にて、社長室長、執行役員営業企画室長、専務執行役・COO(最高執行責任者)などを歴任し、事業運営および成長戦略を牽引。あわせて日本テレマーケティング協会常任理事も務めた。
2010年に合同会社スマートウィル(現 株式会社スマートウィル)を設立。CRM(顧客関係管理)を軸としたマーケティング戦略・組織変革支援を行う。
2012年より青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科(MBA)にて講師を兼任し、「CRM戦略」を担当。
2014年には『この1冊ですべてわかる「CRMの基本」』(日本実業出版社)を刊行し、累計発行部数19,200部(第9刷)を超える。
2025年、東京都議会議員に初当選(世田谷区選出)。現在は、民間企業で培ったマーケティングおよび経営の知見を生かし、都政にも取り組んでいる。
