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機械学習を活用したデータ分析

その2.顧客コミュニケーションの高度化

みなさん、こんにちは。株式会社スマートウィルのコンサルタント、松島です。

今回は機械学習をテーマにしたコラムの第2回として、第1回の「機械学習のメリット」を受けて「顧客コミュニケーションの高度化」に焦点を当て、弊社の機械学習を活用したサービスも少し紹介させていただきます。

前回のコラムで、機械学習を活用したデータ分析のメリットで、特に、「機械学習は大量の変数を扱うことが得意で、しかも解析が早い」ことに着目し、機械学習を使うことで、「大量の顧客データと大量の商品データを紐付けた分析が高速で可能になる」ことに触れました。

では、大量の顧客データと大量の商品データを紐付け、クロス集計などの単純な分析ではなく、機械学習を活用して多様な解析をすることで、それが単なるデータ分析に終わることなく、どんな風に顧客コミュニケーションを高度化させることができるのか、考えてみたいと思います。

分析のことを考える前に、肝心の顧客コミュニケーションがどうあるべきなのか、整理します。
顧客コミュニケーションの高度化を実現するための要素は多々ありますが、基本的に「どんなターゲットに」「どんなタイミングで」「どんなチャネルで」「どんなメッセージを」「どんなトリガーで」コミュニケートするか、それらの要素をいかに最適化するかが重要になるわけです。マーケティングの世界では個々の要素の重要性は今も昔も変わらないのですが、時代の変化によって大きく変化しているのが「チャネル」です。
デジタル化が加速する前、顧客とのOne to Oneコミュニケーションの手段、中でも売り場への集客のためのプロモーションメディアとして主流だったのはDMです。DMで顧客にコミュニケートし集客アップを図る場合、タイミング・メッセージ・トリガーなどの要素も重要ですが、マーケッターが一番苦心するのは「ターゲット」です。なぜなら、DMはOne to Oneのメディアの中では単価が高いため、反応が悪い層をターゲットにしてしまうとコスト効率が悪く、プロモーションを利益化できないからです。
One to Oneメディアのデジタル化が進む昨今でも、DMは単に単価が高いメディアと成り下がったわけではなく、適切な使い方をすれば威力を発揮しますし、顧客の氏名や住所のデータは取得しているけどEメールアドレスは充分に取得できていない、というケースでは依然DM中心のプロモーションが展開されています。
ただ、弊社の多くのクライアント企業様でも、やはり最近のプロモーションの中心はDMからEメールへとシフトしていますし、Lineやアプリ、各種SNSにも注力するというケースも増えています。それぞれのチャネル・メディアごとに特性が異なりますので、どれがいい、ということはないのですが、チャネルごと、顧客接点ごとにターゲティングの考え方が異なります。

DMの場合、顧客コミュニケーション・プロモーションのコスト効率を高めるためには、「反応が高く効率がよい層にターゲットをいかに 『絞る』 か」を優先することになります。ターゲットを絞る、つまり、どの層にDMを出し、どの層に出さないか、という区別・区分をシビアに行なう、「Segment(セグメント)」という考え方です。
ところが、Eメールの場合は、ターゲットを絞っても、メール配信が可能な全顧客に一斉配信しても、配信コストはほとんど変わらないため、コストや手間の観点から言えば、DMのようにデータを分析してシビアにターゲットを絞る必然性はないわけです。
しかし、プロモーションの主体がDMからEメールに変わり、ターゲットのセグメントに苦心していた担当者が楽になったかといえば、そうではありません。また別の課題が勃発しているのです。
EメールはDMと比べると単価が安く印刷や封入のリードタイムがかからないため、大量の顧客に・高い頻度で出すことができます。Eコマースを運営している企業だと、週2、3回メール配信をしているという企業も少なくありません。そのような状況の中、「全ての顧客に同じ内容のメールを一斉配信していていいのか?」、という議論もありますが、それよりも、多くのEメールのご担当者様から私たちがお聞きするお悩みは、「メールを頻繁に出し続けなければならないんだけど・・・『そんなにネタがない!』」、ということです。

では、DMとEメールの特性とターゲティングを比較してみます。
DMの場合、どんな内容のものを送付するかは企業や対象商品・サービス、かけられるコストなどによって異なりますが、例えばアパレル小売業が春物の新作商品をトリガーに店舗集客を図る場合、一押し商品をなるべく多く掲載したリーフレットを作成し、反応が良さそうな層にターゲットを絞ってDMを出す、というのが一般的なセオリーです。反応が良さそうな層とは優良顧客のことで、端的に言えば、「ベストな商品群を、ベストな顧客層にアピールする」ことが最も効率のよい顧客コミュニケーション、ということになります。
本来はここで「では、優良顧客とはどんな顧客なのか? どう定義付けをすべきなのか?」、ということを展開すべきなのですが、かなり深い話になりますので、今回はシンプルに、優良顧客=よく買ってくれる顧客、累積購買金額が多く、購買頻度が高く、直近購買日が近い、いわゆるRFMランクが高い顧客、とします。 (*RFM分析についてはこちら
RFMという軸でDMのターゲットをセグメントする場合、対象データも分析手法もシンプルです。顧客ごとに「いつ・いくら買ったか」が分かればよくて、「何を買ったか」という購買商品の情報は必要ありません。
第1回のコラムで「大量の顧客データと大量の商品データを紐付けた分析をするのは大変、それが可能な環境を整えるのはそう簡単ではない」ということを述べましたが、顧客データと商品データを紐付けた多様な分析は、大変だから出来ない・やらない、というだけではなく、DMのターゲティングをシンプルにRFMだけで行なうのであれば、顧客データだけ集計すればよくて、商品データを紐付ける必要が特になかったのです。だからこそ、「マーケティング部は、顧客データはしっかり見ているが商品データはあまり見れていない、商品部は、商品データはちゃんと見ているが顧客データはあまり見ていない」、という状況になりがちで、今でも少なからずの企業で起こっている事象なのです。

ところが、顧客コミュニケーションの主流がEメールになると話は一変します。
ターゲットをセグメントする必要は特にない。ただし、メールを打つネタがない、打ち続けるだけのネタが続かない! それに、いつまでも全顧客に同じ内容のメールを一斉配信していてよいのか、という議論もある・・・
そんな状況を打破するためには、どんな分析をして、どんなファインディングスやヒントを得ればよいのでしょうか?

Eメールの場合、DMのように、出す層・出さない層にセグメントすることよりも、「誰に・どんなメッセージを」 伝えるのかが重要になります。タイミングやトリガー、特典なども大事ですが、DMの「Segment」という考え方から、「どの顧客層に」×「どんな商品・どんなメッセージを」伝えるべきなのかを具体化する、つまり「Grouping(グルーピング)」という考え方が重要になるのです。
そうなると、RFM分析のように顧客データだけを集計し、単純なクロス集計表を出す程度ではダメです。顧客データと商品データを紐付け、多様な解析をしていく必要があります。

例えば、顧客ごとに一定期間のデータでRFMランクを付与し、購買商品も紐付けて分析用ファイルを作成する。
その上で、例えば、RFMランクと購買商品を変数としてクラスター分析を行ない、顧客のグルーピングを行なう。そのグループの特性を見た上でメールの内容を考える。
もう少し具体的に考えるために、カジュアルアパレル企業を想定してみましょう。例えば、商品の購買カテゴリーとRFMランクでクラスター分析を行なう。その結果、例えば、「RFMが比較的高ランクでデニムなどのボトムスの購買が多いクラスター」と「累積購買金額は低いが購買頻度は高く、インナーウェアばかり買っているクラスター」が出来たとしましょう。
ボトムスの購買が多いクラスターには、新作や一押しのボトムス中心のメールを打つ、売れ筋のボトムスとのコーディネートとしてアウター中心のメールを打つ、特定のボトムスを2本まとめ買いするとセット価格で提供するキャンペーンを行ない、その告知をメールで行なう、などなど、色々な施策が考えられます。どの施策が一番効果的か? それはやってみなければ分かりません。いや、重要なのは、「購買商品とRFMにより顧客ニーズを推測した上でメールの内容を考えることができる」ということなのです。顧客の実態・ニーズが見えてくれば、少し考えるだけでも「ネタ」をいくつか出すことができます。どんなネタが効果・効率が良いのかは実際にやってみて効果検証をすればいいわけですし、効率を追求したいのならABテストを実施すればいいのです。
一方、インナーウェアばかり買っているクラスターには、やはりインナーウェア中心のメールが効くのか、それとも「低単価の商品を購買する」という特性があるのかも知れず、低単価のグッズやアクセサリーを中心にしたメール、あるいは低価格帯のセール商品を押すメールだとどうなのか、または、購買頻度が高いことに着目し、ベーシックなシャツやニットなど着回しがきく比較的低単価の商品群中心のメールはどうなのか?・・・ といったアイデアも浮かんできます。

また、ロジスティック回帰分析を行ない、一押しの商品群をプッシュしたい場合、その商品群を購買した顧客と類似している顧客層を抽出する、といったことも可能になります。ロジスティック回帰分析はベーシックなアルゴリズムで解析ソフトによる人的な解析も可能ですが、購買日や回数・金額だけではなく購買商品も分析対象とすると、第1回のコラムで述べたように、「膨大な顧客データ」×「膨大な商品データ」を扱う必要があり、データが重くて回らない、だから分析をあきらめる、という事態に陥らないためにも、やはり大量データの処理が得意な機械学習を活用したいわけです。

さらに、Eコマースを運用している企業は 「レコメンド」 を行なうことが増えてきました。レコメンドには色々な分析軸がありますが、考え方としては、Eメールの「どの顧客層に」×「どんな商品・どんなメッセージを」という「Grouping」の域を超え、「あなたには×これを!」という「Matching(マッチング)」を実践する必要があります。
レコメンドは協調フィルタリング(※1)やアソシエーション分析でも行なうことが出来ますが、対象顧客と対象商品が膨大になり、レコメンドの精度を高め、客単価アップや購買確率アップを実現するには、やはり機械学習でDeep Learning(※2)などの高度なアルゴリズムで分析をしたいところですよね。

マーケティングの世界では、機械学習、いや、全ての分析は「手段」であり、目的はあくまでも「顧客コミュニケーションの最適化」です。
しかし、顧客ニーズが多様化し、顧客接点となるチャネル・メディアも変化・進化している現在、顧客コミュニケーションを最適化・高度化するためには多様なファインディングスやヒントが必要になりますし、そうなると、多様なデータ・膨大なデータを使って高度な分析を行なう必要があり、それを実現する手段として機械学習は大きな武器になる。私はそう考えています。そして、顧客コミュニケーション最適化において重要な顧客接点の変化を考えると、時代と共に「Segment」だけではなく「Grouping」、さらには「Matching」という考え方が重要になってくると考えます。

 

弊社スマートウィルでは、機械学習を使ったサービスに力を入れています。

1.機械学習を活用したデータ分析

● 顧客クラスター作成
 -アルゴリズム:各種クラスター分析、Decision Treeなど
● ターゲット抽出
 -アルゴリズム:ロジスティック回帰分析、ランダムフォレスト、Decision Treeなど
● 購買商品分析による顧客ニーズの見える化
● テキストマイニングによるキーワード分析 × 機械学習分析
● レコメンド分析
など

2.機械学習分析モデルの実装および運用サポート

● 弊社にて分析モデルを構築し、御社のシステム環境に実装、社内での運用をサポート
 (機械学習ソフトは弊社より提供)

バズワードとしての「AI」や「機械学習」のブームは落ち着いてきましたが、「大量データを・一瞬で・精緻に解析してくれる」機械学習は色々な可能性を秘めており、上記でご紹介した内容にとどまることなく、これからサービスを更に多様化・高度化していく予定です。

2回にわたって機械学習をテーマにコラムを展開させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
マーケティングや分析がご専門ではない方にもご理解いただける内容で書かせていただいたつもりですが、ご意見・ご感想・弊社サービスに関するお問い合わせなどはこちら または、contact@smartwill.co.jpよりお気軽にコンタクトしていただければ幸いです。

 
 


 

(※1)協調フィルタリング
多くの対象者の情報を蓄積し、特定の対象者と行動や嗜好が類似している他の対象者の情報を用いて、自動的に推論する方法のことです。
例えば、AさんがXという商品を購入した場合、Xを購入したBさんがYという商品も購入していたとすると、Aさんも商品Yを購入するのではないか、という推論を自動的に行ないます。この場合は、対象者同士の類似性または商品間の共起性を相関的に解析し、Aさんという対象者が購入したくなる可能性のある商品を提示する、ということになります。

(※2)Deep Learning
Deep Learning(深層学習)とは、機械学習の手法の一つです。Deep Learningの技術はニューラルネットワーク(下記参照)が根幹となっています。ニューラルネットワークを多層にして用いることで、データの特徴をより深く学習することができ、精度の高い分析が可能になります。
Deep Learningでは、大量のラベル付けされたデータとニューラルネットワークの構造を利用して学習を行ない、データの「特徴」を学習することができるため、特徴を人的に抽出してマシンに与える必要がありません。
また、Deep Learningはその分析精度の高さから、数値データや文字データのみならず、情報量が多い音声データや画像データの解析でも実用化が進んでいます。

ニューラルネットワーク
ニューラルネットワークとは、人間の脳の神経回路の仕組みを模したモデルで、コンピュータに学習能力を持たせることにより様々な問題を解決するためのアプローチです。
コンピュータは単純な処理を高速で行なうことは得意ですが、人間にとっては簡単な行為である「物体を認識する、区別する」といった処理は非常に苦手です。そこで、人間の脳のメカニズムをコンピュータに人工的に再現する、というのがニューラルネットワークのアプローチです。
ニューラルネットワークは入力層、中間層(隠れ層)、出力層の3層に分けられます。シンプルなアルゴリズムでは「入力」されたデータを「処理」してデータを「出力」するのがプログラムの一連の流れでしたが、中間層を何層も重ねることでニューラルネットワークの精度を向上させることができます。そして、中間層を2層以上の多層構造で用いる手法がDeep Learningです。